* Unravel Carbonの英語のブログ記事「Best Carbon Accounting Platforms in Japan in 2025」を、日本語へ翻訳したものとなります。
はじめに
2025年の日本の炭素会計(カーボンアカウンティング)を取り巻く環境は大きく変化しています。国内では「SSBJ(サステナビリティ基準委員会)」の基準策定が進み、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」や「CSRD(企業サステナビリティ報告指令)」といった国際的な枠組みとの整合性も高まっています。
さらに、「GHGプロトコル(温室効果ガス算定基準)」や「SBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)」などのグローバルスタンダードの影響力も増しており、東京証券取引所(TSE)のプライム市場上場企業には気候関連の情報開示が求められています。日本政府のグリーン成長戦略では、2050年を最終目標とした野心的な脱炭素目標を掲げています。そのため、日本企業は、第三者保証対応のデータに基づく信頼性の高いGHG排出量報告を、国内外のステークホルダーに提供する必要があります。
日本の開示基準の状況
現在、日本の開示フレームワークは着実に進展しています。特に重要なのが、国際的なISSB(国際サステナビリティ基準審議会)のIFRS S1・S2と整合するSSBJ基準の段階的な導入です。
主な義務化スケジュール:
- 現状:TCFD準拠の開示はすでにプライム市場企業で実質的な要件とされており、日本のTCFD賛同企業数は1,480社超と世界最多です。
- 2027年3月期(期末)〜:時価総額3兆円以上のプライム市場企業を対象に、Scope 1・2・3の温室効果ガス排出量を含むサステナビリティ情報の開示が義務化されます。
- その後:対象は段階的に時価総額1兆円以上の企業、時価総額5000億円以上の企業へ拡大し、最終的にはプライム市場の全上場企業(約1,600社)が対象となることが検討されています。
特に注目すべきはScope 3(サプライチェーン全体の間接排出)の重要性です。多くの企業では、全体の排出量の大半をScope 3が占めており、サプライチェーンの透明性確保が急務となっています。
こうした状況下で、適切な炭素会計(カーボンアカウンティング)プラットフォームの選定は、単なるコンプライアンス対応にとどまらず、実質的な脱炭素の実現やステークホルダーとの信頼関係構築にも直結します。
本記事では、2025年の日本市場で注目される主要5社の炭素会計(カーボンアカウンティング)プラットフォームのそれぞれの特徴をご紹介します。
主要プラットフォーム紹介
1. Unravel Carbon(アンラベルカーボン)
Unravel Carbonは、複雑な複数フレームワークへの対応が求められる日本企業向けの最先端AI活用の炭素会計(カーボンアカウンティング)プラットフォームです。複数のAIエージェントによる自動化により、データ収集から排出量の算定、第三者保証準備、開示報告書の作成まで、サステナビリティ業務の各工程を高度に自動化します。
主要機能:
- Scope1、2、3の完全算定:GHGプロトコルに100%準拠。CSV,PDF、画像データ、ウェブフォーム、システム直接連携など柔軟なデータ取込に対応
- 世界最大級の独自データベース:130万件以上の排出係数、地域別データ、燃料・品目価格などのDBを自社で構築。気候変動・データの専門家チームによる継続的なデータ更新実施。ユーザー企業独自の原単位登録とカスタマイズに対応。
- 第三者保証対応データ管理:包括的な監査証跡、エビデンス保管、保証機関専用ログイン機能。
- 脱炭素ロードマップ策定:削減シナリオ分析、削減目標の設定、150以上の削減施策ライブラリ。
- サプライヤー連携:サプライヤー(取引先)へのデータ提供依頼を自動送信。サプライヤーから提供された一次データによるScope 3排出量の精緻化。
- 開示報告書作成支援:GRI、IFRS S2、ISSBの各開示基準に対応したモジュールを搭載。AIによる報告書ドラフト作成支援と、同業他社ベンチマーク機能。
対応する規制・開示基準:
- 算定基準・方法論:GHGプロトコル、ISO 14067
- 開示基準・フレームワーク:TCFD、IFRS S2(ISSB)、SSBJ、GRI、CSRD
- セキュリティ認証:ISO 27001、SOC 2 Type I、SOC2 Type II
技術仕様:
- 基幹システムとの連携:SAP、NetSuite、Xero、Workday、BambooHRなどとAPI・SFTP経由で直接接続
- AIによるデータ品質管理:データ検証、異常値の自動検知、70以上の言語対応
- 詳細な可視化機能:拠点別・設備別の排出量分析、カスタマイズ可能なダッシュボード
AI活用による業務自動化:
- Unravel Copilot:サステナビリティ担当者の業務を支援する専門AIアシスタント
- データ収集エージェント:社内外のデータソースやデータ所有者から排出量関連データを自動収集
- 排出量算定エージェント:活動量データを自動でマッピングし、排出量に変換
- インサイト・レビューエージェント:データの品質チェックとエラーの自動修正
- ESG開示エージェント:報告書の自動作成、開示項目のギャップ分析、同業他社比較
選ばれる理由:
- Unravel Carbonは、エージェンティックプラットフォームにより、他社を圧倒する業務効率化を実現します。従来、膨大な時間を要していたデータ収集・算定・報告書作成を自動化し、担当者は戦略的な脱炭素施策の立案に集中できます。同時に、第三者保証機関が求める監査証跡を自動生成し、高い監査対応力を確保します。
- SAP等の主要基幹システムとの直接連携により、リアルタイムでの排出量把握が可能。130万件の排出原単位を搭載した独自データベースが、日本特有の算定要件にも柔軟に対応します。
- TCFD、ISSB、SSBJなど、次々と導入される開示基準に迅速対応。プラットフォームの拡張性により、将来の規制変更にも追加開発なしで対応可能です。脱炭素経営を本気で推進したい日本企業にとって、最適な統合プラットフォームです。
2. Asuene(アスエネ)
(* 2025年11月8日現在で確認した情報にて記載)
Asueneは包括的な環境管理を提供する日本のプラットフォームです。
主要機能:
- 可視化:GHG算定(Scope1-3)、水管理、廃棄物管理、エネルギー管理、科学物質管理(PRTR)、大気汚染物質管理
- 脱炭素化支援:削減目標・貢献量、削減ロードマップ、クレジット調達支援、再生可能エネルギー調達
- 報告:CDP、SBTi、TCFD/TNFD、CSRDなど
- 共通機能:BPOサポート、承認機能など
対応する規制・開示基準:
- SSBJ、CDP、SBTi、TCFD/TNFD、CSRD、PRTRなど
技術仕様:
- AIモジュール:ASUENE AI、AI NIKOLA、AI Lab、AI Chatbot
- AIP連携、多言語選択(10以上の言語)、SSO(Microsoft、Googleなど)
AI / 業務自動化:
- コンサルティングAI、レポートAI、アナリティクスAI、AI-OCR、AI削減シミュレーション、回答自動化
3. Zeroboard(ゼロボード)
(* 2025年11月8日現在で確認した情報にて記載)
Zeroboardは、炭素会計(カーボンアカウンティング)およびESGデータ管理を専門とする日本のプラットフォームであり、堅牢なサプライヤーエンゲージメント支援およびBI分析を備えています。
主要機能:
- GHG排出量(Scope1-3)、カーボンフットプリント(CFP)
- 連結炭素会計機能、マルチアウトプット機能
- サプライヤーアンケート機能、カスタム算定機能
- ESGデータ一括管理、BI分析、期日管理・リマインド設定機能、複数の制度・開示基準への対応
対応する規制・開示基準:
- 各種機関からの認証:ISO14064-3、PACT
- 各種制度の開示・保証基準への対応:CSRD、SSBJ
技術仕様:
- AIST‐IDEAデータベースを標準搭載、Scope 2 AUTO(スマートメーターの電力データを自動連携)、一次データ連携、ウラノス・エコシステム
4. Persefoni(パーセフォニ)
(* 2025年11月8日現在で確認した情報にて記載)
Persefoni(パーセフォニ)は、グローバルに展開し、日本市場においても高度な分析機能、気候リスク分析、そして高い信頼性を備えたコンプライアンス基盤を提供しています。
主要機能:
- GHG排出量(Scope1-3)、PCAF/ファイナンスド・エミッション、廃棄物・水の管理
- プロダクトカーボンフットプリント(PCF)、製品レベルのシナリオ分析
- データのセグメント・属性、ネットゼロナビゲーター、排出量ベンチマーク、物理的リスクモデリング
- 操作方法に関するビデオやドキュメント、プレミアムサポート
対応する規制・開示基準:
- 算定基準・方法論:GHGプロトコル、PCAF
- 開示基準・フレームワーク:UK SECR(英国省エネルギー・炭素排出報告制度)、California SB-253/261(カルフォルニア州 SB253:企業気候データ説明責任法、SB261:気候関連財務リスク法)、CDP、SBTi、ISSB、CSRD
- セキュリティ認証:SOC 1 Type II、SOC 2 Type II、ISO 27001/ISO 2701
技術仕様:
- API連携、SSO、MFA、IPホワイトリスト
AI / 業務自動化:
- 異常検知、パーセフォニ・コパイロット
5. Workiva(ワーキーバ)
Workivaは、グローバルに展開し、日本市場においてもAIを活用した排出量の計測や脱炭素計画、保証機能を提供するプラットフォームです。
主要機能:
- AIを活用した監査対応のカーボンアカウンティング、GHG排出量(Scope1-3)、AIとエラー検出機能を活用するデータ自動取り込み、バリューチェーンのデータ収集に向けて調査を統合
- 脱炭素計画、サプライチェーンのリスクを評価、削減機会を特定
- ESG報告作成支援、AIガイダンス
- 完全な監査証跡(組み込み型コントロール、ワークフロー、コラボレーションツール)
対応する規制・開示基準:
- CSRD、ISSB、California SB 253/261、CDP、GRI
技術仕様:
- 240以上の地域の排出係数、統合データ基盤、監査証跡管理
AI / 業務自動化:
- AIを活用したデータ取り込み、ESG対応のAIガイダンス、サプライチェーン全体のデータ収集の自動化
よくある質問(FAQ)
Q1:2025年の日本における新しい炭素会計規制とは何ですか?
日本は、国際的なISSB基準と整合するSSBJ基準に基づき、段階的なアプローチでサステナビリティ開示要件を導入しています。2027年3月期終了の事業年度から、時価総額3兆円以上の東京証券取引所プライム市場の上場企業は、Scope 1、2、3の温室効果ガス排出量を含むサステナビリティ情報を開示しなければなりません。この要件は段階的に時価総額1兆円以上、5000億円以上の企業に拡大され、最終的にはすべてのプライム市場上場企業(約1,600社)に適用されることが検討されています。
プライム市場上場企業は、すでにTCFD準拠の気候関連開示を行うことが求められています。SSBJ基準には、企業の最初の事業年度においてScope 3開示要件を免除する経過措置が含まれており、最も早いScope 3の開示は2028年3月期からとなります。日本では、産業界・金融界・学界が参画する TCFDコンソーシアム を通じて、企業による気候関連情報開示の実践や理解を促進しており、気候関連リスク・機会の評価や開示の高度化を支援しています。
Q2:自社に最適な炭素会計(カーボンアカウンティング)プラットフォームをどのように選べばよいでしょうか?
炭素会計プラットフォームを評価する際は、規制対応範囲、監査可能性(監査対応力)、自動化の程度、自社システムとの連携可能性、そしてスコープ3およびサプライチェーンデータへの対応といった観点を確認しましょう。また、自社の規模、業務の複雑さ、報告義務(開示要件)も考慮することが重要です。
出典・参考情報
- Tokyo Stock Exchange (TSE): Number of Listed Companies
- Sustainability Standards Board of Japan (SSBJ): SSBJ Standards
- Financial Services Agency (FSA): Disclosure and Assurance of Sustainability Information
- Ministry of Economy, Trade and Industry (METI): Climate Change Policy
- TCFD Consortium
- Japan's Green Growth Strategy
- GHG Protocol
- Science Based Targets initiative (SBTi)
- Asuene, Zeroboard, Persefoni, Workiva, Unravel Carbon: Official platform documentation and website as of Nov 8th, 2025.

.jpg)

.jpg)
